本サイトサポート関係のコンテンツの多くは、事実を元にした内容です。
しかしながら、この「萌え炉利っく」に限っては基本的な部分から全てフィクションです。
サポートセンターの従業員が全員メイドさんだったら、どんな事になるのでしょう。
これは、恐らく世界初、多分日本初のサポートセンターとメイドさんを組み合わせた物語です。
“萌え”という単語にピンと来たら、よろしければお話におつきあい下さい。
第0話 ぱんつ何色? 03/06/30
英作「さて諸君、我が社は普段、サポートセンター業務を営んでいる訳だが」
美奈子「ついに倒産したのね」
英作「ちっがーう! 今日から経営方針に“萌え”の2文字を加えることにする」
英作を除く全員「はい?」
英作「萌えだ、萌え!」
亜里砂「萌えって・・・オタク用語の萌えですか?」
英作「さすが亜里砂君、よく解っているじゃないか」
沙由理「具体的に私たちはどうすればよろしいのですか?」
英作「提示される“お題”に沿って、萌えのシチュエーションを作ってもらおう」
亜里砂「お題?」
英作「例えばだ、このサポートセンターに『ぱんつ何色?』って電話が掛かってきたとする。これに対して萌えるシチュエーションで答えて貰おう。それが今回のお題だ」
美奈子「そんなバカ・・・もとい、お客様は正規の10倍のサポート料金をふんだくってやるわ!」
英作「ばかもーん! それのどこに萌えの要素があるかっ! ええい、亜里砂君、君なら萌えの何たるかを理解しているだろう。見本を見せてやってくれ」
・・・ぱんつ何色?
亜里砂「水野亜美(セーラームーン)、綾波レイ(エヴァンゲリオン)、虹野沙希(ときめきメモリアル)、ミント・ブラマンシュ(ギャラクシーエンジェル)から連想して下さい」
亜里砂を除く全員「・・・」
英作「そうか、水色か。“水色髪萌え”という言葉もあるくらいだしな」
と言いながら、ピラッとスカートをめくって確かめる。
亜里砂「キャッ、何なさるんですか〜!」
英作「まぁこんな具合に、萌えのシチュエーションを追求していこうという訳だ。次回までに沙由理君と美奈子は萌えについて勉強しておくように」
それにしても「萌え炉利っく」とは、センス無いネーミングだな・・・
第1話 初恋 03/07/02
英作「さて、第1話のお題は初恋だ」
沙由理「初恋って、歌手の故・村下孝蔵さんの唄われた曲でしたわね」
英作「えらい古い曲知ってるな〜。でも、そうじゃなくって、文字通りの初恋だ」
美奈子「と言うと?」
英作「サポート相手のお客さんが、実は初恋がらみの相手だったという事が判明したとして、どう萌えるシチュエーションにもっていくかが今回のお題だ」
亜里砂「でも、その場合私達は仕事中ですから、私的なお話はできませんよねぇ」
英作「まぁそれはこの際OKとしよう。そうしないとストーリーが進まないから(笑)」
亜里砂「住所を聞き出して、近くなら押しかけサポートしちゃうってのはどう? そこから恋が芽生えるかも」
英作「そのままHシーンになだれ込んだら『はじめてのめいどさん』とか題名つきそうだな(笑)」(元ネタ:はじめておいしゃさん、はじめてのおるすばん)
全員、ジト目で無言のまま英作を睨む。
英作「すまん、忘れてくれ。続きをどうぞ」
美奈子「でも、既に結婚してたらどーするの?」
沙由理「チャイム鳴らしたら奥さんが出てきて、そこへ制服(メイド服)でダンナさんを訪ねていったら、いろんな意味で誤解を招きかねないわね」
英作「それは“萌え”じゃないけど、面白そうだな」
美奈子「奥さんにどう説明するのよ」
沙由理「『ご主人様のご実家から家政婦斡旋所にご依頼があり、本日伺いました』」
全員「・・・」
沙由理「こう言えば、少なくとも浮気方面で誤解されるコトはありませんし、この制服も不自然ではないと思いますわ」
亜里砂「さらりと恐いことを言うのね、沙由りんって」
美奈子「沙由姉ってもしかして敵に回すと一番恐いタイプかも」
亜里砂「メイドさんがいきなり家を訪ねてくる漫画はあるわよ」(例:まほろまてぃっく)
英作「それどころか、12人もの妹がある日突然湧いてくるゲームもあるしな」(元ネタ:シスタープリンセス)
沙由理「世間一般ではそういうのを“萌え”というのですね」
美奈子「それは違うわよ。“萌え”って単語に格別の想いを抱くのはオタクの世界だけだってば(笑)」
沙由理「それでは私たちは今、所期の目的通り立派に“萌え”の談義をしている事になりますね」
英作「いや、ビミョーに違うような・・・」
第2話に続く
余談:村下孝蔵と入力して最初に出てきた変換候補が「蒸らした構造」で大ウケ(笑)
第2話 初恋2 03/07/03
英作「前回の続きで、押しかけ・・・もとい、訪問サポートの話が出たけど、既婚者が相手では話が進まないね」
亜里砂「略奪愛ってのも世間にはあるけど」
英作「確かにHゲームでも人妻をテーマにしたものはいくつかある。だけど、このサイトの作者が不倫とかの概念を嫌っているんだってさ」(例:妻みぐい、人妻×人妻)
美奈子「不倫しようにも、それ以前にまず結婚出来るくらいにはモテないと。作者はその結婚すら出来ないからひがんでるだけじゃないの?」
作者「何だとー!!」
英作「これ以上作者をいじめると出番を減らされたりするかもしれないから、そろそろ本題に入ろう」
沙由理「そうですわね。では、お相手の方は独身の美青年ということでよろしいかしら?」
英作「初恋の相手が必ず美青年とは限らんだろう?」
美奈子「だからと言って美老人って事はないでしょう?」
英作「もういい。ともかく続けてくれ」
美奈子「訪問先って言えばね、思いも掛けずHな絵がいきなり出ちゃう事ってあるよね」
亜里砂「こないだね、お客さんのパソコンでクリックする位置がずれちゃって、間違えて別のファイルを読み込んじゃったの」
美奈子「それで?」
亜里砂「そのお客さん、偶然高校の時同じクラスでね、初恋じゃないけどちょっとカッコイイって思っていたの」
英作「すっげーHな無修正画像でも出てきたか?」
亜里砂「それならまだいいわ。出てきたのは・・・その・・・私の写真で・・・」
沙由理「その方が亜里砂さんの写真をお入れになっていたということは、両想いということになりませんか?」
美奈子「そこで一気に告っちゃえばよかったんじゃない?」
英作「おおっ、多少は“萌え”っぽくなってきたぞ」
亜里砂「ちがいます。出てきたのは・・・その・・・私の下着が少し見えちゃってる写真で・・・」
美奈子「亜里砂、そんな写真撮らせてたの?」
亜里砂「そうじゃなくてね、修学旅行ってグループに分かれて行動するじゃない」
英作「そこで水色髪のサッカー部マネージャが熱でも出したか?」(元ネタ:ときめきメモリアル)
沙由理「まぁ、髪を水色に染めても校則違反にならないなんて、おおらかな学校ですわね」
英作「話の腰を折って悪かった」
亜里砂「その人と同じグループにはなれたんだけど、記念写真を撮る瞬間に風でスカートがめくれちゃって」
英作「おおっ!」
亜里砂「もちろんすぐ手で押さえたわよ。出来上がって掲示板に貼り出された写真を見て初めて、押さえきれてないのに気づいたの」
英作「じゃ、学年中にその写真を見られたの?」
亜里砂「そうなの、恥ずかしかった〜。修学旅行の写真だから後日撮り直しって訳にもいかなくて」
沙由理「そのファイルはどうなさいましたの?」
亜里砂「仮にもお客さんのファイルだし、勝手に消す訳にもいかないから、半ば強引に承諾もらって消したわ」
美奈子「それよりね、わざわざ写真を取り込んだって事は、どこかの変なサイトに投稿でもしたんじゃないの?」
亜里砂「それはしていないって言ってたわ。記念写真だから自分の顔も写っていますし、目線とか改造したファイルはありませんでしたから」
沙由理「ところで英作さん、さっきから何をやっていますの?」
英作「ドキッ」
美奈子「あーっ、そのお客さんに画像を取り込み直して送ってもらうメール書いてる!」
全員「すけべ!」
英作「わはは、ごめんごめん」
亜里砂「もう、知りません」
英作「じゃ、亜里砂君の話はこれで終わりにしよう。次回は沙由理君、今回と同じ設定で話を進めてくれ」
第3話に続く
第3話 初恋3 03/07/05
英作「今回も引き続き、訪問サポートの話でいこう。お客様が偶然初恋の相手だったとして、どう萌える展開にするかがお題だ」
沙由理「今回は私の番ですわね。えっと、何からお話ししましょうか?」
美奈子「まずはお客さんとのご関係は?」
沙由理「私、高校の時に生徒会で書記をやらせて頂いたのですが、お客様はその時の先輩で生徒会長でした」
英作「やっぱ初恋相手?」
沙由理「私の初恋相手というよりは・・・それはおいおい話していきますわ」
英作「何か複雑そうだな」
沙由理「複雑なことではありませんわ。(高校)在学中はそのお宅が生徒会の皆さんの溜まり場になっておりまして、今でもたまに集まって思い出話に興じる事もありますよ」
亜里砂「何だか楽しそう」
英作「じゃ、訪問サポートって言っても行き慣れたところだったんだ」
沙由理「それはそうですけれど、仕事として行くのは今回が初めてですし、それにこの制服(メイド服)で行くのは正直言って恥ずかしかったですわ」
英作「もしも作者がスク水萌え属性だったら、スクール水着で訪問サポートという可能性もあったな」
美奈子「はーい、私まだ高校生だからスクール水着現役でーす」
英作「おう、今度俺の目の前で着てみてくれ」
美奈子「特別ボーナス出してくれたら着てあげてもいいよ」
亜里砂「それって援交って言うんじゃ・・・?」
英作「実の兄妹で援交も何もないっ!」
亜里砂「最近は“妹”というのが割と萌えの対象になっていますし・・・」(例:シスタープリンセス)
美奈子「えー、兄貴そういう目で私を見てたのー? 超軽蔑〜」
英作「シャレにならん冗談をお前が言うな〜〜!!」
美奈子「じゃ、兄貴は私のスクール水着を見る機会はもう一生無くても良いんだね」
英作「そう言われると何だか少し見たいような・・・」
全員「やっぱり・・・・」とジト目で見る
英作「だ〜か〜ら〜、スク水の妹に例えば脱がしたいとか、着替えを覗きたいとか、何かHな事したいと言ったらさすがにヤバイけど、単に鑑賞するだけなら良いじゃないかー!!」
亜里砂「ということは、スク水の妹を鑑賞するという趣味がおありなのですね?」
英作「趣味じゃないって!」
沙由理「あのー」
亜里砂「何?」
沙由理「話が盛り上がっているようなので、私はこの辺で」
英作「ごめん、今回はスク水で結構引っ張っちゃったから、次回こそ頼むね」
美奈子「作者の無計画さが全ての原因だわ」
亜里砂「ストーリーを進める上で起承転結は基本中の基本。その基本がデタラメなのはもう最低ね」
作者「正論をありがとう。ご褒美に美奈子君と亜里砂君には近いうちに露出度の高いストーリーを特別に用意してあげよう」
美奈子・亜里砂「セクハラだーっ!」
第4話に続く
番外編第1話 暑さ対策 03/07/08
沙由理「あら? 今回は第4話で私がお話しする番ではございませんでしたか?」
英作「本来ならそうなんだけど、ここいらで暑さ対策の話をしておこうと思ってね」
美奈子「確かにね。メイド服って夏服でもスカート長いから特に暑いわ。兄貴〜、何とかしてよー」
英作「まほろさん※を見習いなさい、どんなに暑くてもキチッとした格好でいるじゃないか」(※まほろまてぃっく単行本2巻第2話)
美奈子「そんなの漫画の話じゃない、現実はやっぱ暑いわよ」
英作「こらー! 扇風機の前でスカート持ち上げて風を入れるなー!!」
美奈子「女だけだったらみんな結構こういうものよ」
亜里砂「みんなのスカート丈、少し短くしましょうか? 改造ならコスプレで慣れていますから、プロ並みに仕上げてみせるわよ」
美奈子「少し短くじゃなくて、ミニスカートにして。学校の制服でだってミニだしさ」
亜里砂「そうね、それなら涼しそうね。英作さんだって若い女の子の脚線美が見られるのは嬉しいでしょう?」
沙由理「私はもう23ですし、そんなに短いのはちょっと・・・」
英作「普段着や学生服ならミニでもいいけど、メイド服でミニというのは王道に反するから却下!」
美奈子「何オタクっぽいこだわり持ってんのよ。暑いんだから、しょうがないじゃない」
英作「よし、美奈子だけミニへの改造を特別に許してやる」
美奈子「ホント? やったね、さすがは兄貴、話せるじゃない♪」
英作「但し、一つだけ条件がある」
美奈子「何よ」
英作「股下ゼロセンチのスカート丈ならOKだ。それ以上長いのはダメ。言っておくが下にブルマ着用も禁止だ」それはそれで萌えるような気もするが(笑)
美奈子「そんなの着てお客さんのところに行ける訳ないじゃない、もう横暴なんだから〜」
英作「中(事務所内)でなら着るのか?」
美奈子「事務所は冷房効いてるからそんな格好する必要ないわよ」
英作「じゃ、経営者権限で冷房止めてやる」
美奈子「いいわよ、やってやるわよ。だけど暑さで事務所のコンピュータ壊れたって知らないからね」
英作「ふっふっふっ、こんな事もあろうかと、冷却能力を特別に強化しておいたのさ。やると言った以上はやってくれよな」
美奈子「ずっるーい! そんなに妹のパンツ見たい訳? 変態〜!」
英作「変態とは何だ、つべこべ言うともっと短くするぞ。亜里砂君、すまんが美奈子の制服を改造してやってくれ」
〜やがて制服の改造が完了〜
英作「どうした、さっさと更衣室から出て来んか」
美奈子「だって、こんなの何か動くたびに見えちゃうじゃない」
英作「出てこない間は時給を払わんぞ」
美奈子「わかったわよ、出て行くわよ」
美奈子の姿やいかに、ここでは掲載できないのでとりあえずこちらへどうぞ♪
番外編第2話につづく
番外編第2話 暑さ対策2 03/07/08
美奈子「前回はひどい目に遭ったわ」
英作「別に妹のパンツ・・・もとい、股下ゼロセンチの超ミニスカの姿を見たからと言ってどうということはないけど」
美奈子「だったらあんな恥ずかしい格好させないでよ、このセクハラ魔人!」
英作「ブルマ着用禁止とは言ったが、アンスコやスパッツまで禁止にはした覚えはないぞ」
美奈子「汚ねー!」
英作「せっかく逃げ道を作っておいてやったのに、気づかん方が悪い」
美奈子「体育のある日ならともかく、そんなのいつも持ち歩いている訳ないじゃない」
英作「そんな事は知らん。ともかく、諸君から制服の暑さ対策の要望が出ているのは承知している」
美奈子「もうフツーのミニでいいからさ、それにしようよ」
英作「ダメだ。ミニスカートだと客先で組み立てや設置なんかの作業が出来ないだろう。あれじゃどうしたってパンツが見えるぞ」
美奈子「それもそうか」
英作「実はそんな事は大した理由ではない。前回も言った通り、ミニスカのメイド服は邪道だからだ!」
美奈子「でも、長けりゃどうしたって暑いわよ」
英作「暑かったら冷やせば良いだろう? パソコンだってその多くは冷却ファンがついているぞ」
美奈子「だって、前回で扇風機使ったら怒ったじゃない」
英作「あれは傍目にも見苦しいからだ!」
美奈子「じゃどうしろって言うのよ」
英作「パソコン用の冷却ファンをスカートに内蔵する」
全員「はい?」
英作「実は既にパーツは準備してある。これだ」
沙由理「フロッピィも内蔵するのですか?」
英作「いや、それは単なる大きさ比較用。よくセブンスターが比較用に使われるが作者が煙草を吸わんのでな」
美奈子「ミニスカのメイド服は邪道だと言うクセに、冷却ファンを内蔵したメイド服は邪道でないって言うの?」
英作「うん」
美奈子「一点の曇りもない表情でアッサリ『うん』って即答して片づけないでよ」
英作「大丈夫だ。なぜなら内蔵バッテリーでも動作出るが、USBコネクタで必要な電力をまかなうから」
亜里砂「もしかしてマスターはメイド服とUSBケーブル(コネクタ)の組み合わせに萌えているのでは?」(元ネタ:ハンドメイドメイ)
英作「その通り、よく解ったね。では亜里砂君、早速自分の制服でファンを内蔵する改造をしてみてくれ」
〜やがて制服の改造が完了〜
亜里砂「どう? 足の付け根付近の左右に2個ファンを取り付けたわ」
英作「よし、そのままそこのスクリーンの前に立ってくれ」
亜里砂「立ったわよ。何かあるの?」
英作「スイッチON! ふむふむ、一つのファンは吸気でもう一つが排気だな」
亜里砂「そうですけれど?」
英作「内部電源は単3電池3本だな。USB経由で外部から電力が供給される場合には自動的に切り替わるか。なるほど」
亜里砂「何で解るんですか?」
英作「それはな、こんな事もあろうかと密かに造っておいた透過スクリーンのおかげだ。スカートの中がこんなふうに丸見えだぞ」
亜里砂「え? 何これ、ちょっと、やだーっ」
美奈子「兄貴、前回の番外編と言い、何かすっごくエッチな路線に突っ走ってない?」
英作「そりゃそうさ、第3話の終わりに『美奈子君と亜里砂君には近いうちに露出度の高いストーリーを特別に用意してあげよう』と約束したからね」
美奈子「兄貴が勝手に言っただけじゃない。そんなの約束でも何でもないわよ!」
英作「さすがに本編ではやりづらかったから番外編でって事で」
亜里砂「えっちなのはいけないと思います」(元ネタ:まほろまてぃっく)
英作「ともかく次回は本編第4話だから、沙由理君、頼むよ」
沙由理「わかりましたわ。でも、ほどほどにしないと、読者の皆さんがついて来ませんわよ」
第4話につづく
第4話 初恋4 03/07/11 07/14改訂
沙由理「えっと、どこまでお話しましたっけ? あ、そうだわ。英作さんが美奈ちゃんのスクール水着を見たいという所まででしたわね」
英作「その話はもうええっちゅうんじゃ。ともかく元生徒会長さんのところへ訪問サポートに行ったところから話を進めてくれ」
沙由理「その元生徒会長さんは平尾先輩っておっしゃいますけど、インターネットに繋がらなくなったということで行ってきました」
美奈子「そんでエッチなサイトを見られなくなってイライラしたその先輩が、沙由姉に襲いかかったと」
英作「こら、話をまぜっかえすんじゃない」
沙由理「行ってみたら確かにインターネットに繋がりませんでしたので、検証確認用に持っていったノートパソコンをルータに接続してインターネットに繋がるかどうかを試してみたのです」
英作「基本的な原因究明方法の一つだね」
沙由理「ノートパソコンからは何の問題もなく繋がりましたので、今度は平尾先輩のパソコンとの間で通信できるか試してみました」
英作「で、どうだった?」
沙由理「結論から申し上げますと、平尾先輩のパソコンに繋がっているLANケーブルが断線していたのが原因でした。最近部屋の模様替えをしたそうで、移動した家具の下敷きになっていましたわ」
亜里砂「じゃ、LANケーブルの交換で解決?」
沙由理「ええ、それで問題は解決したのですが・・・」
英作「が?」
沙由理「検証している時に、平尾先輩のご自宅の中に私の名前がついているパソコンがネットワーク越しに見つかったのです」
亜里砂「その先輩自身のパソコンじゃなかったのね?」
沙由理「ええ、平尾先輩のご自宅にはもう一台弟さんのパソコンがありまして、そのパソコンの名前が私と同じ『Sayuri』でした」
美奈子「偶然?」
沙由理「私も最初はそう思ったのですが、この事が判ったとたんに平尾先輩、思い当たる節があったそうで」
英作「だいたい想像はつくけど」
沙由理「ええ、私は高校時代から今でも時々、当時の生徒会の皆さんといっしょに平尾先輩の家にお邪魔しております」
美奈子「グループ交際(笑)みたいなもんね」
沙由理「結構かなり違いますが、そんな感じです」
美奈子「どっちなのよー」
沙由理「ともかく弟さんともよくお会いしますし、一緒に遊んだりもしますから、そのうちに私のことが好きになったのではないかという事でした」
亜里砂「で、いくつ? その弟さんは」
沙由理「確か、今年ちょうど二十歳になったはずですわ」
美奈子「じゃあ沙由姉は、その人の初恋の相手って訳?」
沙由理「平尾先輩がおっしゃるには。私が平尾先輩の家に初めてお邪魔したのがもう7年前ですから、弟さんが13歳の時に私に出会ったことになります」
亜里砂「で、その弟さんとはそれ以降会ったの?」
沙由理「ええ、その時のお話は次回にして差し上げますわね」
英作「次回にするとかの進行役は俺なんだが・・・」
第5話につづく
第5話 初恋5 03/07/14
英作「前回での話は、元生徒会長さんのとこに訪問サポートに行って、そこの弟さんの初恋相手が沙由理君らしいと判明したんだよね」
美奈子「そうそう。その弟さんと会うところで前回は話が終わってたんだっけ?」
沙由理「ええ。それで、私が居ることを内緒にしたまま、平尾先輩が近所に外出中の弟さんを、急遽呼び戻したのです」
英作「もちろん、そのメイド服で会うことになった訳だね」
沙由理「ええ。普通のお客さん相手ならもう慣れましたけど、やはり昔からの知り合い相手では、少し恥ずかしかったですわ」
英作「で、その弟さんの反応は?」
沙由理「そうそう、その弟さん、義久(よしひさ)君っていうんですけれど、平尾先輩と知り合った頃から先輩は『よっしー』と呼んでいましたので、私たちも自然に『よっしーくん』と呼ぶようになりました」
英作「その呼び方と反応に何か関連性が?」
沙由理「全くありませんわ」
全員「何なの(何だよ)それはー!」
沙由理「いえ、皆さんがあまりにも期待に満ちた眼をしていらっしゃるので、つい・・・」
英作「まぁいい。それで、そのよっしーくんとやらの反応は?」
沙由理「目が点になって、何秒か考え込んでから、『コスプレ?』って聞いてきましたの」
全員「(笑)(笑)(笑)」
沙由理「イメクラと言われなかっただけまだマシです」
英作「で、何て答えた?」
沙由理「『コスプレが趣味なのは別におりますわ。今度紹介してあげましょうか?』って」
亜里砂「私の事ね」
沙由理「よっしーくんは『いや、別にいい』って」
亜里砂「まぁ、失礼しちゃうわね(笑)」
沙由理「それでね、平尾先輩が『面白いものをみせてやろう』と言って、パソコンを操作して私の名前のついたパソコンを指さしたのです」
英作「その時の反応を見てみたかったな」
沙由理「かわいそうなくらいに真っ赤になっちゃって、純情というか今時珍しいというか、とっても可愛かったわ」
美奈子「沙由姉はどうしたの?」
沙由理「私がどうというより、平尾先輩が『今度二人っきりでデートしてこい』って、強引に決めさせられてしまいました」
英作「伝説の樹の下の告白じゃなくって、ツリー構造表示のもとでの告白ってか?」(元ネタ:ときめきメモリアル)
沙由理「告白はされていませんわ。ただ、デートをしてくれって平尾先輩から言われただけです」
美奈子「OKしたの?」
沙由理「ええ、即答でお断りするのも悪いですし、一応は」
英作「次回はドキドキ初デート編だな(笑)」
沙由理「もう、そんなんじゃありませんわ」
第6話につづく
今回の内容って、萌えか? 何か違うような・・・ ま、いいか。
第6話 初恋6 03/07/15 07/17改訂
英作「今回は沙由理君のデートの話だな。で、デートした感想はどうだった?」
沙由理「どうだったも何も、まだこれからですわ」
美奈子「なーんだ、まだだったの」
亜里砂「せっかく面白い話が聞けるかと思ったのにぃ」
英作「いつなんだ、そのデートは?」
沙由理「次の日曜日です」
亜里砂「どこで?」
沙由理「N遊園地で」
美奈子「何時から?」
沙由理「10時に現地で待ち合わせです。もしかして、皆さんも来られます?」
英作「(ドキッ)まさか。その日はほら、美奈子に買い物に付き合うよう頼まれてだなぁ」(と、美奈子をつつく)
美奈子「え、ええ。里沙姉と二人で行くつもりだったんだけど、荷物持ちがいるかなぁと思って」(同様に、亜里砂をつつく)
亜里砂「あはははは、今度のコスプレ用の生地とかいろいろ買おうかなと・・・」
沙由理「そう、それは残念ですわね。せっかくN遊園地の入場券が3枚余っていましたので、皆さんに差し上げようかと思っていたのですが」
英作「・・・ともかく、二人っきりでデートを楽しんできてくれ。あとで土産話でも聞かせてくれればそれでいいさ」
沙由理「わかりましたわ。それではそうさせて頂きます」
〜日曜日の朝〜
英作「みんなよく来てくれた」
美奈子「こっそり後をつけようなんて、これじゃまるでストーカーじゃない」
亜里砂「そうそう。入園料タダ、休日出勤扱いにしてくれるっていう条件じゃなきゃ、来ませんよ」
英作「文句を言う割に顔がほころんでいるぞ。しかも何だ、その服は?」
亜里砂・美奈子「変?」
英作「ばれないよう普段と違う格好をして来いとは言ったけど、だからって亜里砂君、何で君はうさ耳と大きなサイコロ2つを頭に付けてるんだ? それに美奈子、おまえはどうしてミニの白い浴衣姿なんだ?」
亜里砂「見て判んない? ラビ・アン・ローズ(うさだひかる)のコスプレに決まっているでしょ」(原作:デ・ジ・キャラット)
美奈子「美夕っていうキャラクターなんだって。里砂姉が変装ならこのコスプレ衣装貸してくれるって言うから」(原作:吸血姫美夕)
英作「よけい目立つわいっ!」
亜里砂「そっか、目立っちゃいけないんだった。コスプレに熱が入るあまりつい目的を忘れちゃって(笑)」
英作「もういい。亜里砂君、せめて頭に乗ってるうさ耳とでっかいサイコロと赤いリボンは取ってくれ」
亜里砂「ちぇっ、せっかく作ったのに・・・」
英作「美奈子、お前は頭の左側と右足首の赤いリボンを取れ」
美奈子「そう怒んないでよー」
英作「ほら、ちょうど良いタイミングで沙由理君が来たぞ。こっちの物陰に隠れよう」
亜里砂「あ、沙由りんに手を振りながら駆け寄っていく男の人がいるわ」
美奈子「例の『よっしーくん』かしらね」
英作「そうだろう。それにしても今日の沙由理君は何だか大学生か、下手すりゃ高校生に見えるぞ」
沙由理はシンプルなデザインの、薄いピンク色した少し長めのキャミソールに、同色系のチェック柄フレアミニスカート。
よっしーくんは黒いTシャツに色褪せたGパンというファッションだった。
亜里砂「相手が年下なんだから、服装に気を遣ったんじゃない?」
美奈子「それにしたって二人とも初デートだってのに、まるで普段着じゃない」
英作「変に着飾るより良いじゃないか。場に合った服装を心がけるのは大事なことだぞ、な、亜里砂君!」
美奈子「兄貴ったら、あてつけがましいんだから」
英作「そんな訳で次回をお楽しみに」
全員「まだ引っ張る気ー?」
第7話につづく
第7話 初恋7 03/07/17
美奈子「前回は沙由姉のデートの話が聞けると思ったけど、なかなか話が進まないね」
英作「作者の家が新盆(しんぼん)を迎えて、ストーリーを考える時間が無かったんだってさ」
亜里砂「しーぽんを迎えた? セーラームーンにそっくりな髪型の?」(元ネタ:宇宙のステルヴィア)
英作「しーぽんではないっ! 初盆(はつぼん)とも言うし、同じ新盆と書いて(にいぼん)とも言う法事の事だ」
美奈子「つまんない事言ってると、沙由姉達見失っちゃうよ。早く追跡しよーよ」
英作「うむ、デート追跡はラブコメ漫画ではよく使われる手法だしな」
◇
一方、沙由理とよっしーくんは・・・
よっしー「懐かしい服ですね。最近その服を見かけませんでしたから」
沙由理「あら、この服のこと、覚えていてくれた? 今はもう子供っぽく思えて、あまり着なくなっちゃったけれど」
よっしー「そりゃ覚えていますよ、思い出深い服ですから」
沙由理「そんなに印象に残るようなこと、あったかしら。どういう思い出?」
よっしー「えー、覚えていないんですか? 何年か前にうちで飲み会やった時の事ですよ」
沙由理「うーん、昔はこれと似たような服ばかり着ていたから、いちいち覚えていないわ。」
よっしー「覚えていないんだったら別にいいですよ」
沙由理「気になるなー、飲み会やった時によっしーくんにとって思い出深い事ねぇ。もしかして酔って絡んだとか?」
よっしー「絡まれた訳じゃありませんが、一部そうかも」
沙由理「私が絡んだ? 何したかなぁ? 思い出せないわ」
よっしー「覚えていないなら、それで構わないですよ」
沙由理「だ・め・よ、一方的に思い出があるなんて不公平だわ。教えてちょーだい、おねーさんからの命令よ」
よっしー「本当に良いんですか? あとで怒ったりしないで下さいよ」
沙由理「そういう事言われると、ますます知りたくなるわ。いーから早く教えなさい」
よっしー「酔って足下がふらついた瑞穂さんを助けようとしたんですけど、結局一緒に転んじゃったんですよ」
沙由理「それが思い出?」
よっしー「いえ、その時にお互いに抱き合う状態で口と口が接触して・・・」
沙由理「ああ、思い出したわ。そういえばそんな事もあったわね」
よっしー「瑞穂さんの髪が僕の服のボタンにからんじゃって、みんなが見ている前なのに、ほどこうと動くたびに何度か唇が触っちゃって」
沙由理「もしかしてキスは初めてだった?」
よっしー「そりゃそうですよ、だってあの時僕は高校に入ったばかりの頃でしたから」
沙由理「まぁ、最近はもっと早い子だっているのに」
よっしー「あの当時、友達の中でもキスまで済ませていたのは、ごくわずかですよ」
沙由理「なら、そのごくわずかの仲間入りをした訳ね」
よっしー「いえ、あれは事故ですから、僕としてはカウントに入れるつもりはありません」
沙由理「そうね、彼女に悪いものね」
よっしー「彼女なんていたら瑞穂さんを誘いませんよ。今回は確かに兄が口火を切ってくれましたけど、デートしたいなと思っていたのは、ずっと前からの僕の意志でもあるんです」
沙由理「まあ。では、あれから誰ともキスしていないの?」
よっしー「そうです」
沙由理「また私としてみる?」
よっしー「いいんですか?」
沙由理「今日のデート次第ってとこかしら、ふふっ」
◇
その会話を、物陰から集音マイクで聴いている3人。
英作「なんか、一方的に沙由理君のペースだなぁ」
美奈子「沙由姉って、若作りしてもそれが若作りじゃなくって、自然に私と同じ年代に見えちゃうからすごいわ」
亜里砂「そうね、外見は沙由りんの方が年下に見えるくらいなのに、会話は完全に沙由りんが年上としてリードしているわね」
英作「突然だが、今回はここまでね」
美奈子「またずいぶん唐突ね」
亜里砂「それに、これでもかってくらいに沙由理編は引っ張るのね」
英作「そんなことは作者に言ってくれ」
第8話につづく
第8話 初恋8 03/07/18
ジェットコースターやお化け屋敷などいくつか廻り、園内のレストランに入っていった沙由理とよっしー。
出歯亀・・・もとい、追跡三人組も、運良く二人からは見えにくい少し離れた位置に座ることが出来た。
店員「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりでしょうか?」
沙由理「ね、よっしーくん、食事のついでに少しアルコール付き合ってよ」
よっしー「はぁ。一応飲めますけど、いいんですか? 昼間っからお酒なんて」
沙由理「何か不都合でも?」
よっしー「いいえ、じゃ、少しだけ。瑞穂さんは何にしますか?」
沙由理「えっと、私は白ワインとシーザーサラダね」
よっしー「僕はサンドイッチと水割り、それにチョコレートアイスを下さい。アイスは水割りと一緒でいいです」
◇
沙由理達のテーブルでオーダーが終わろうとする頃、その様子を窺っていた英作達のテーブルでは・・・
美奈子「ねぇ、前に聞いたことあるけど、沙由姉ってお酒飲むとすごいんだって?」
英作「う〜ん、一定量過ぎるとすごいというか酒乱の状態になるんだけど、その一定量というのが結構な量でな」
美奈子「ワイン1杯や2杯くらいなら大丈夫なのね?」
英作「ああ。彼女を酒乱になるまで酔わそうと思ったら、グラスワインの10杯や20杯でもまだ足りないくらいさ」
亜里砂「去年の忘年会の時にはすごかったですからね」
美奈子「あ、その話、私ちょっと聞いただけしか知らない」
英作「そうだな、まだ美奈子がバイトに来る前だったからな。今度また機会があったらその話をしてやるよ」
英作が話を区切ったのは、ウェイトレスがオーダーを取りに来たからである。
結局英作のテーブルでは、何種類かあるランチメニューの中から、それぞれ好きなものを注文した。
◇
沙由理「ねぇ、よっしーくん?」
よっしー「はい、何でしょう、瑞穂さん」
沙由理「あのね、私が『よっしーくん』って呼んでるのに、君はいつまで堅苦しく『瑞穂さん』って呼ぶのかな?」
よっしー「でも、いきなり『瑞穂さん』とかお呼びするのはちょっと・・・」
沙由理「ちょっとなぁに? それじゃあ私も君を見習って、今から『平田後輩』って呼ぼうかしら」
いたずらっぽく言う沙由理の言葉を集音マイクで聴いていた英作達は、笑いをこらえるのに必死だった。
よっしー「それは変ですよ」
沙由理「どうして? 私は普段から君のお兄さんを『平田先輩』と呼んでいるわ。同じように『平田後輩』でもいいでしょ?」
よっしー「うー。降参します。では、『沙由理さん』って呼んでいいですか?」
沙由理「だーめ」
よっしー「えっ? じゃあ、何てお呼びすればいいですか?」
沙由理「よっしーくんは、自分のパソコンに私の名前を付けていたでしょう」
よっしー「・・・ええ、まぁ。すみませんでした」
赤くなりながら答えた。
沙由理「謝らなくてもいいわ。そのパソコンは何て呼んでいたの?」
よっしー「本当に声を出して呼ぶような事はしていませんよ。それだと何だかアブナイ人みたいじゃないですか」
沙由理「(笑)そんなこと解っているわよ。例えば何かの操作中にコンピュータ名が表示された時にね、声に出さなくても私の名前を頭の中では認識する訳でしょう?」
よっしー「はい、でも、それは名前自体を思い浮かべただけで結果的に呼び捨てになっちゃいますけど、瑞穂さんに対しては年上ですし、呼び捨てはまずいかなと思いますので・・・」
沙由理「つまり、コンピュータでは呼び捨てで私の名前を思っていたのね」
よっしー「はい、ごめんなさい」
沙由理「あのね、責めているんじゃないわ。だから謝らなくていいの。コンピュータ名もそのままでいいわ。だから一度だけでもいいから言ってみてくれる? 私の名前を呼びすてで」
よっしー「はい、さ・・・沙由理・・・」
沙由理「っっっく〜! う、うふふふふ」
まるで風呂上がりのビールを満喫した時のような、顔文字で表せば o(≧▽≦)o のような沙由理。
よっしー「な、何ですか? そんなに変でしたか?」
沙由理「うふふふふ、ごめんなさい。実は私ね、一度も男の人から名前を呼び捨てで呼んで貰ったことがないの」
よっしー「そうなんですか」
沙由理「今までに付き合ってきた人はみんな『瑞穂』と苗字で呼んでくれることはあっても、『沙由理』と名前で呼んでくれることはなかったもの」
よっしー「はぁ」
彼としては、相槌を打つような返事しかできない。
沙由理「よっしーくんは、私にとって初めての男の人。これで私も一つ経験を積んだわ」
あらぬ誤解を受けそうな表現で、沙由理以外の全員が目を白黒させる中、彼だけはさらに顔を赤くしてうつむいた。
沙由理「一度呼んで貰ったら気が済んだわ。今まで通りでもいいし、下の名前で呼んでくれても構わないわよ」
結局、よっしーは「沙由理さん」と呼ぶことにしたのだった。
◇
英作「まじめに恋愛論を展開するかと思ったらいきなりボケをかますとは、なかなかやるな」
亜里砂「名前の呼び方を変えるシーンは、付き合い始めのカップルの萌えイベントですね」
英作「恋愛シミュレーションゲームでも、親密度が増すと呼び方変わるものもあるくらいだし」(例:ときめきメモリアル)
美奈子「そんな訳で、今回はここまで。次回につづきまーす」
英作「進行役は俺だー! 俺の役をとるなーっ!!」
第9話につづく
第9話 初恋9 03/07/21
遊園地内のレストランで食事中(お酒もあり)の沙由理とよっしー。
話が弾んだせいもあって、二人はそれぞれのグラスで3杯目を終えようとしていた。
よっしー「食事も終わったことですし、そろそろ出ませんか?」
沙由理「ええ。でも、もう少し酔いを覚ましてからの方がいいんじゃないかしら? 顔が赤いわよ」
飲酒にまだ不慣れなよっしーは、初デートで浮かれたせいもあってか、予想以上の酔いを自覚していた。
沙由理の言葉に他意はなかったのだが、お酒に弱いと思われるのが嫌で、
よっしー「大丈夫です、これくらい」
と、つい見栄を張って答えた。
沙由理「無理すること無いわ」
よっしー「無理じゃありません。例えどんなハードな乗り物でも大丈夫です」
沙由理「そう? そこまで言うのなら。私、そういう乗り物大好きだから、覚悟しておいてね」
よっしー「それは楽しみです。行きましょう」
ますます引っ込みがつかなくなったよっしーだった。
◇
それからというもの二人は、高いところに吊り上げて一気に落下させるフリーフォールや、観覧車のような乗り物自体がぐるんぐるんと回転するロックンロールなど、激しい動きをするものばかりに乗った。
スカートが風にあおられたり、乗り物が逆さまの状態になるたびに、どうしても翻ってしまう。
沙由理「やだー。これじゃ見えちゃう」
よっしー「見てませんから安心して下さい」
沙由理「ホントに? さっきから何回も見られてると思うけれど」
よっしー「気のせいですよ」
沙由理「だって、さっきから私のスカートばっかり見てるんだもの」
よっしー「そんなことありません。ほら、次はあそこに見えるジェットコースターに乗りましょうよ」
激しく動く乗り物は、素面の状態では外の景色を見ていた方が、気分が悪くならずに済む事が多い。
しかし、酔った時の動態視力では、めまぐるしく変わる景色の影響をまともに受けて、返って酔いがひどくなる事があり、今のよっしーはまさにその状態だった。
その後も回転したり激しく上下左右に動く乗り物に乗り継いで、つい視線は目の前に固定されてしまった。
沙由理「ほら、やっぱりスカートの中覗いてる。よっしーくんのえっち」
よっしー「違いますよう。覗いてなんかいませんってば」
慌てて外の景色を見るが、思考力はますます低下していった。
沙由理「じゃあ本当に覗いていないかテストしてあげる」
よっしー「どうやって?」
沙由理「今日の私のパンツを正確に答えられたら、キスしてあげる。答えは一回限りよ」
よっしー「えっ、本当ですね。約束ですよ」
沙由理「メンツを取るかキスを取るかは・・・」
よっしー「白とピンクの縞々模様!」
沙由理が続きを言いかけたのと、よっしーが勢いよく叫んだのが、同時だった。
沙由理「ちょっと、そんなに大きな声で言わないでよ、恥ずかしいじゃない」
よっしー「すみません、知っている答えだったものですから、つい・・・」
よっしーはバツが悪そうにうつむいた。
ここまで酔いが回っていなかったら、たぶん引っかかりはしなかっただろう。
沙由理「なあに、やっぱりスカートの中覗いていたのね」
よっしー「す、すみません。覗くつもりはなかったんですけど、その・・・視界に入っただけで、無理矢理覗いた訳じゃなくって・・・」
沙由理「もういいわ。でも、これからは覗かないでね」
◇
英作「うんうん、縞パンっていいよなぁ」
美奈子「すけべ! 何見てんのよ!」
英作「無理矢理見た訳じゃあるまいし、結果的に見えただけじゃないか」
偶然にもよっしーと同じような事を言う英作。
(動きの激しい乗り物は、騒音で集音マイクが使えず、彼らは二人の会話を知らない)
美奈子「そこをあえて見ないのが紳士ってもんでしょーが!!」
英作「何を言うか。遊園地でのパンチラシーンはお約束のシーンじゃないか」(例:下級生)
亜里砂「あっ、次は観覧車に乗るみたいよ。私たちも行きましょう」
英作「という訳で、次回は観覧車編だな」
美奈子「まだ続くの? いーかげん新しい展開考えたら?」
作者「努力します」
第10話につづく
第10話 初恋10 03/07/22
※この話数から、段落などのフォーマットを、一般的な小説に合わせたものに変更します。
遊園地でデート中の沙由理とよっしー。
二人は観覧車に並ぶ列にいた。
「遊園地の締めくくりは、やっぱり夕陽を見ながらの観覧車よねー」
両手を後ろに組んで、伸びをしながら沙由理は言った。
背を反らせると、少し大きめの胸が一層強調される。
「そうですね。ゆっくりした乗り物は心が落ち着きます」
これ以上ハードな乗り物に乗らなくて済んだと思うと、よっしーは心の底から安堵した。
万が一トイレにでも駆け込むような事になったら、やはり格好が付かない。
列に並ぶ際に買ったジュースと共に、安堵感も手伝ってか、体調は急速に快復していった。
「あら、ごめんなさいね、落ち着かないものばかり付き合わせちゃって」
「いえ、そういう訳では・・・それにしても、沙由理さんは平気なんですか?」
「ええ。ちょうどほろ酔い気分で、この柔らかな風がとても気持ちいいわ」
順番が来て、二人は観覧車に乗り込んだ。
少し遅れて、マイク片手にヘッドホンの怪しい男と、妙な衣装2人組の女が順番を待っていた。
◇
沙由理とよっしーを乗せた観覧車は、時計で言えば9時の方向に差し掛かっていた。
会話が途切れた瞬間、沙由理は素早くよっしーの唇に軽くキスをした。
「ご褒美のキスよ」
「はは、何か照れますね。でも、5年前のキスを沙由理さんが当初覚えていなかったのが、ちょっと悔しいですけど」
「覚えていないんじゃなくって、忘れていただけの話よ」
同じ事である。
「沙由理さんにとっては、忘れるほどの事でしかなかったんですか?」
「違うけど、近いかも」
「では、沙由理さんはもしかしてあの時、初めてのキスではなかったんですね?」
「なあに、質問ばっかりね。よっしーくん自身も言ったじゃない、あれはカウントに入れるつもりはないって。その言葉は嘘なの?」
「あ・・・」
よっしーは質問した側だったが、予測し得なかった質問という形での返答に、一瞬詰まった。
「アクシデントなんかじゃなくて、私の意志でよっしーくんとキスしたのは今が初めてよ」
「わかりました。変なこと聞いて済みませんでした」
「気にしていないわ」
にっこりとほほえむ沙由理。
よっしーはその後ろに来て、一息に
「今度は僕の意志で沙由理さんにキスしてもいいですか?」
と少し早口で言った。
「だめ」
「・・・そうですか・・・」
うなだれるよっしーに、クスクス笑いながら沙由理は
「だって今、ちょうど頂上付近よ。隣の観覧車から丸見えだわ」
と、肩をすくめながら言った。
「じゃあ、あと90度進んだら」
「それもいや。60度ね」
「45度でどうでしょう」
再び二人の唇が触れ合ったのは、45度よりも少し早かった。
第11話につづく
次回は沙由理デート編最終話・・・の予定(笑)
第11話 初恋11 03/07/23
シートに逆向きに膝立ちで乗り、いくつか前方の観覧車の様子を窺う美奈子と亜里砂。
「あ〜、沙由姉の観覧車が下がってっちゃう〜」
「追い越し出来ないのかしら、じれったいわねー」
より一層窓下を見ようと前のめりになっていく。
いつしか完全にパンツが見えている状態になっていたが、二人は一向に気づいていなかった。
そんな様子を英作は対面側のシートに座って眺め、
「(デート追跡にパンチラシーンはお約束だしなぁ、うんうん)」(例:BOYS BE…27巻206話)
と、ささやかな幸福感に浸っていた(笑)
◇
沙由理とよっしーの二人は、遊園地を出て駅に向かって歩き始めていた。
駅までは10分くらい歩く事になり、そのせいか遊園地には車で来る客が多い。
駅に着いても人影が殆ど見あたらないのは、その意味では当然と言える。
沙由理は、ホームに登る階段をそのまま行き過ぎていく。
「沙由理さん、どこへ行くんですか?」
「ちょっとそこまでね」
あまり返答になっていなかったが、よっしーはそのまま素直について行った。
追跡3人組は階段の陰に隠れ、それ以上の接近は出来ない。
沙由理は30歩進んだところで止まり、くるっと振り向いた。
「私は下り方面だから、この駅でお別れね」
手をバイバイと振りながら言う。
「なんだか今日一日があっという間に終わっちゃいました。楽しかったです」
「私も楽しかったわ」
「またお誘いしてもいいですか?」
「ええ、でも今度は二人っきりでデートしたいわね」
「は?」
呆然とするよっしーをその場に残し、沙由理は早足に階段の位置まで戻って、
「妹さんを連れて、亜里砂さんとデートですか、社長。確か今日は、お買い物だったのではありませんか?」
亜里砂を除いて肩書きで呼んだのは、よっしーが聞いている事を考慮しているからだった。
「やあ。偶然だな、沙由理君」(元ネタ:フルメタル・パニック)
亜里砂と美奈子が、こういう時に漫画でありがちなままの感じでずっこけた。
「そんな目立つ格好してずっと跡をつけていれば、いやでも判りますわ」
「偶然だ」
「あの・・・」
おずおずとよっしーが声を掛けてきた。
「ちょうど良いわ、紹介するわね。この人が私の勤務先の社長、そこでアルバイトをしている妹さん、そしてこの前お話ししたコスプレが趣味の同僚よ」
「偶然こんなところでお会い出来て光栄です、守山英作と申します」
「初めまして、瑞穂さんの後輩で黒川亜里砂です」
「初めまして、守山美奈子です」
「あ、どうも、初めまして。平尾義久です」
「それにしても、亜里砂さんはともかく美奈ちゃんまでそんな格好して・・・」
「あはははは、つい調子に乗っちゃって」
「沙由姉、いつ判ったの?」
「最初に乗ったジェットコースターの順番待ちの時にね」
亜里砂と美奈子が、
「だったら声掛けてくれればよかったのに」
と声を揃えた。
「あれだけ大勢いる中で、そんな格好した怪しい人達と知り合いに思われたら恥ずかしいからです」
「はは、なかなかユーモアのある人達で、楽しい職場のようですね」
よっしーはひきつった顔で言った。
「あら、そんなに言葉を選んで言わなくてもいいわよ」
「ともかく、こうして偶然出会えたのも何かの縁です」
「まだ偶然というか、兄貴?」
美奈子のツッコミを無視して英作は続けた。
「平尾さん・・・いや、失礼、平尾様は我が社の大切なお客様でもいらっしゃいますし、ご一緒に食事でもいかがでしょうか」
「お誘いは有り難いのですが、私はこれで失礼させて頂こうかと・・・」
「こんな格好の連中と一緒に食事をするのは、接待じゃなくって嫌がらせだよ、兄貴」
「俺だってお前がそんな格好をしてくるとは思ってもいなかったぞ」
「沙由理さん、ともかく私はこれで失礼しますので。また近いうちにいつものように遊びに来て下さい」
一礼をして、よっしーは逃げるように去っていった。
「あーあ、行っちゃった。沙由姉、追いかけなくていいの?」
と問う亜里砂に、
「その必要はありませんわ。平尾先輩の家には時々遊びに行っていますしね」
沙由理が答えた。
「それにしても沙由理君、今日はまたずいぶん若い格好をしているな。いつもの通勤時の私服とはえらい違いじゃないか」
「こんなに短いスカートも久しぶりですわ。今着ておかないと、もうこの先似合わなくなると思って」
そう言って沙由理は、その場でくるりと一周回ってみせた。
「で、結局付き合うことにしたのか?」
「いいえ」
「は? 何で?」
沙由理以外の全員が、まさに声を一つにした。
「だって、今日は平尾先輩の頼みでデートしただけですし、よっしーくんから告白とかされていませんもの」
「でも、キスまでした仲だろう?」
「そこまで覗いていたのですか?」
「え? 本当にしたの?」
沙由理は一瞬沈黙し、
「引っかけたわね、英作さん」
と拗ねるように言った。
「あ、そういうつもりじゃないってば。この集音マイクで聴いた5年前の話の事を言ったんだけど」
結果的に、沙由理は自分でばらした事になった。
「英作さん、目をつぶって下さい。それでデートを覗いたことは許してあげますから」
沙由理は右手を振り上げ、ビンタの構えを見せながら言った。
「これでいいかな」
チュッ
「あっ」「えっ」
声を上げたのは亜里砂と沙由理だった。
「(ん・・・んぐ・・・)」
沙由理は英作にキスをして、ちょうど10秒後に離れた。
「間接的に男同士のキスよ。ザマーミロですわ」
英作から目をそらして、沙由理はいたずらっぽく言った。
「キス自体は気持ちよかったが、男同士の部分だけ気色悪いわいっ!」
「沙由りんって、初めてのデートでもあんなに濃厚なキスをしたの?」
「さあ、どうかしら。でも、大人のキスはやっぱりドキドキするような相手じゃなきゃね」
「平尾さんはどうだったの?」
と美奈子が聞く。
「かわいい弟みたいな感じね。今のところ男友達だわ」
第12話につづく
ようやく沙由理デート編が終了〜
番外編第3話 宴会1 03/07/24
「さて、早速次のお題を出して、読者の皆さんに萌えて頂かなくてはいかん」
「それで、次のお題は何?」
「作者も次のネタを考える時間が欲しいと言ってきている事だし、今回のお題は宴会としよう。」
「宴会っていっても私、未成年だからお酒飲めないよー」これはもちろん美奈子だ。
「心配するな、お前の好きな食べ物も豊富に用意したし、ソフトドリンクもある」
「ならいいや」
「ちょうどビールのおいしい季節でもあるし、ビール以外の酒も手配しておいた」
「ちょっと待って下さい、マスター。ちっともサポートセンターの要素が入っていないじゃないですか」と亜里砂が言った。
しかし英作は構わず続ける。
「第8話でも去年の忘年会の話をする機会があればという事だったが、ちょうど良い。話をするより、再現というわけじゃないが、実際に宴会を開いてしまおうという訳だ。もちろんサポート系の要素は含むように工夫してある」
「楽しみですわ。宴会はいつどこで開かれるのでしょう?」酒好きの沙由理はワクワク顔で聞いてきた。
「今度の定休日前日にこの事務所で開く。幸い、みんな自宅が近い事だし、終電を気にすることなく騒げるだろう」
「仕事が終わってから?」
「そうだ。仮眠室もあるから、そこで酔いを覚ましてから帰ることも出来る」
◇
定休日前日、仕事も終わって宴会が始まろうとしていた。
「宴会って、芸者さんとかコンパニオン嬢はいないんですか?」
「ハンサムなホストでもいいわ」
亜里砂と沙由理の質問に英作は、
「うちのような弱小企業にそんな金はない!」
「ちぇっ、コスプレの参考にしようかと思ったのに・・・」と、亜里砂。
「あらまあ、残念ですわね」
これはもちろん沙由理だった。
「まずはともかく乾杯だ。全員飲み物は行き渡ったか?」
「はーい」(美奈子は未成年なのでソフトドリンク)
「では、我が社の繁栄と従業員の健康を願って、かんぱーい」
ひとまずの歓談後・・・
「さて、そろそろアトラクションに移るか。ともかく、サポートセンターに勤務する者としては、宴会最中も勉強だ」
「???」(全員)
「よって、IT関連用語のしりとりを行う」
「ルールは?」
美奈子の問いに、
「一定秒数以内にIT関連用語を答えられなかったら罰ゲームだ。業務経験年数を考慮して、美奈子、お前は10秒、亜里砂君は8秒、沙由理君は5秒、そして私は3秒の持ち時間が順番が回ってくるたびにある」
「罰ゲームは何ですの?」
今度は沙由理が問う。
「乾杯時と同じグラスの酒を飲み干すか、服を一枚脱ぐか、料理を小皿一皿まるごと平らげるかだ」
(注:実世界で上司の立場でこんな事を言えばセクハラとなりますので、よい子はマネしないように(笑))
「私、グラスにお酒は入っていないんだけど?」
「美奈子はグラスの酒の代わりに板チョコ1枚だ。カロリー高いぞ〜(笑)」
「やだー、ニキビ出来ちゃうし、太っちゃう」
「だから罰ゲームだ。嫌なら他の選択肢を選べ。あ、それから事故防止のために一気飲みは禁止だぞ」
「もう、横暴なんだか配慮があるんだか訳わかんないわね、マスターは」亜里砂が愚痴る。
「何とでも言え。ともかく始めるぞ」
◇
「ちょっと作者さんよ」と英作
「何?」とHIDE
「例の手筈、整っているんでしょうね」
「もちろんさ。君はしりとりに絶対に負けない。作者だって読者だって男(ヤロー)の裸の描写なんて、したくないし見たくもないからな」
「それを聞いて安心したよ。じゃ、舞台に戻るから」
「この世にご都合主義がある限り、キモイ描写はしないさ。ふっふっふっ」
女性読者(いるのかな?)のみなさんすみません、今回のお題は主に男性読者向けサービスです(^^;
番外編第4話 宴会2(同人版に収録)につづく
第12話 ラブレター 03/07/25
「ねえ兄貴、今回は番外編の宴会2じゃなかったっけ?」
「それは同人版に収録すると、↑↑に書いてあるじゃないか」
「あははは、ごめん、見落としていたわ」
「私から一言説明しよう」と、作者登場。
「当初はサイト発表にしようかと思っていたけど・・・」
「けど?」全員口を揃えて言う。
「15禁はサイトで発表できないからなぁ。一応ここ、健全な(笑)全年齢対象のサイトだし」
「という事は、同人版は15禁になるの?」
「表現はサイト版よりも15禁寄りにするけれど、一応全年齢対象にする予定」
亜里砂が
「なんだ、それならあまり恥ずかしいシーンを書かれなくて済みそうだから、安心ね」と、胸をなでおろす。
「最近は全年齢対象のはずの少年誌でも、それなりにそれなりだからねー、うひひ」(例えば「ラブひな」では全裸さえ登場する)
「いやらしい笑い方ね、もう」と、非難がましい目をしながら亜里砂が言った。
「では諸君、これから仕事、頑張れよ。あでゅ〜」
「川柳のつもり?何か五七五の次にあでゅ〜とか言いながら去っていったわ」(元ネタ:美少女戦士セーラームーン)
◇
「作者も帰ったことだし、早速本題に入ろう。今回のお題はラブレターだ」
「ラブレターって言えば、前から気になっていたんだけどね、レターって手紙でしょ。E−mailで送ったらラブメールとかラブEメールって言っても良さそうなもんだけど、あんまり使わないよねー」
「実は俺もそう思ったことがあって、IT関係の辞書や一般的な辞書を調べてみたんだ」
全員が英作の方を向いて続きを待った。
「調べた結果、どの辞書にもそんな用語は載っていなかった。しかし、実際に使っているサイトもいくつかある」
「沙由理君、ちょっとGoogleで調べてみてくれ。ラブメールだけでも何千件ものリザルトがあるから」
「まあ、たくさん出てきましたわ」
「普通の個人サイトからアダルトサイト、場合によっては新聞社の記事にも使われている」
「これだけあっても、正式な用語ではないのですね」と、沙由理は操作を続けながら言った。
「辞書にあるものだけが正式な用語で、無いものは間違っているというつもりはないが、辞書を一つの指標として考えた場合、『(辞書に載るほど)広く一般に認知された言葉ではない』とも言えるだろう」
そこへ亜里砂が
「それって『愛妻弁当』を『ラブワイフ弁当』と表現するのと同じ事ですね」(元ネタ:あずまんが大王3巻99ページ)
と、茶々を入れた。
「当たらずとも遠からずといったところかな。今回は萌えの要素があまりなかったけれど、次回は頑張ってくれよ」
第13話につづく
第13話 洗濯 03/07/26
「そういや子供は夏休みの季節だな。美奈子もここ最近は連日事務所にいるし」
「いーでしょ。学校も休みだし、バイト代も稼げるしね」
「美奈子はドジが多いからなー。この分じゃバイト代減らしちゃおうかな。いっそ下着売って稼ぐ方が割がいいんじゃないのか?」
「そうね、私の下着1点について1万円で兄貴に売ってあげるから、洗濯してタダで返してよ」
「俺に何のメリットがある? 1万円払って洗濯をやらされるだけじゃないか」
「そうとも言うわね。でも、現役女子高生の洗濯前の下着が一瞬でも手に入るのよ」
「あのな、同じ家に住んでいるんだから、やろうと思えば洗濯機漁ればいつでも手に入るわいっ!」
「ショックー、兄貴そんなことしてたのー!? 超軽蔑〜!!」
「超を乱用するな、恥ずかしいやつだな。それに、やろうと思えばと言ったろう。 実際にやったことは今まで一度もないっ!!」
「って事は、やろうと思ったことはあるのね?」
「誰がお前の汗臭い下着なんか」
「汗臭いかどうかいつ確かめたのよ、変態!」
「夏休みに入った初日、洗濯当番を忘れて遊びほうけて帰りの遅かったお前に代わって、おふくろに洗濯を手伝わされた時だ。汗に濡れたまま洗濯機の中に入れっぱなしにしてたから、おふくろ、怒ってたぞ」
「マスターがくんくんして臭いを確かめたんじゃないのね」と、亜里砂。
「当たり前だ。っていうか、何だ、その『くんくん』ってのは。ともかく、こっちは洗濯を手伝わされていい迷惑だ」
少し頬を赤らめて美奈子が
「悪かったわね、汗臭い下着を洗わせて!」と、拗ねたように言う。
「別に。俺が洗濯当番の時は家族全員分の洗濯物を洗ってるんだし、お前が当番の時もそうじゃないか」
「まーね、私だって当番の時は兄貴のカビが生えたようなパンツ洗ってるんだし」
「カビは生えていないが、サルマタケが生えたら嫌だけど面白いだろうな。何かこう、恐い物見たさというか(笑)」(元ネタ:大四畳半物語、男おいどん他多数)
そこへ亜里砂が
「まあ、伝説のサルマタケ! 本当に生えたら写真撮って見せてね」
「亜里砂さん、サルマタケって何ですの?」
「私も知らない、何それ?」
「最近の若い者はサルマタケを知らんのかー!!」
「知っている人の方が少数派だと思いますけど、こんなんです」
と言って亜里砂は、インターネットで検索した情報を使って一通り説明した。
「気色わるー。そんな兄貴のパンツと私の下着は一緒に洗えないわ。洗濯機もう1台買ってもらおうかなー」
「気色悪いとは何だ。それに洗濯機は1台しか置けないだろーが」
「わかってるわよ、それくらい。言ってみただけよ」
「さて、おしゃべりはこの辺にしてそろそろ仕 わっ!」
英作は、手にしていたお茶を誤ってこぼしてしまった。
ポケットからハンカチを取り出して拭き始めたが、やがて・・・
「あ〜に〜き〜、なに手に持ってんのよ〜!」
「へ? あっ!」
ハンカチのつもりで取り出したのは、美奈子のパンツだった。
「はは、ハンカチとパンツを間違えるのはよくある事だ、気にするな」(例:みゆき)
「気にするわよ、このお約束ドジのばか兄貴ー!!」
英作の頬に手型がつたのは言うまでもない。
第13話につづく
第14話 ラブレター2 03/07/28
英作の事務所も、まもなく昼休みを迎えようとしていた。
だからといって、電話が遠慮がちに小声で鳴るという訳ではない。
無遠慮に鳴る電話を、ちょうど手すきの亜里砂が取った。
「はい、サポートセンター、担当の黒川です」
電話に出ると、相手のお客様はまだ高校生くらいの男の子という印象だった。
登録情報などを一通り伺った上で、質問の本題に入る。
「あのー、Outlookを使っていて、昨日の夜に間違って別の人に送っちゃったメールをさっき気づいて、どうしても取り消したいんです」
「お客様のご登録頂いている情報によりますと、OutlookはOutlookExpressでよろしいですね?」
「はい」
「送信済トレイのフォルダには、残っていませんか?」
「えっと、あっ空だ。う〜ん、送信済みアイテムのフォルダになら残ってるんだけど、それじゃダメかな?」
と、すがるような声で聞く。
「大変申し訳ございませんが、OutlookExpressでは一度送信済みとなったメールを取り消すことは出来ません」
「ダメか・・・」
「代替案や次善策と致しましては、誤送信相手に誤って送った旨お詫びした上で削除のご依頼をされてはいかがでしょうか。そして改めて本来のお相手にメールをお送りすればよろしいかと思います」
正論ではあるが、あまりにも正論をそのまま真正面から言うと、時として人は反感を覚える事がある。
中には「そんな事ぁ言われんでもわかっとる!そこを何とかするのがお前らの仕事だろーが」などとまくし立てる人もいる。
しかし今回のお客様は、すごく気落ちした様子で急に小声になり、
「・・・・・・だったんです」と、つぶやくように言った。
「??? お客様、お電話が少し遠いようです。恐れ入りますがもう一度お願い出来ますか?」
「ラブレターだったんです」
「??? 申し訳ございません、今少し聞き取りにくいのですが」
「ラブレターを間違って別の人に送っちゃったんですよっ! 本当に何とかならないんですかぁ〜」
前半は開き直りで威勢良く、対照的に後半の情けなさそうな声に亜里砂は思わず、
「(っ、くくくくくっ)」と声を殺して笑い、およそ1秒後に平静を取り戻して続けた。
「何とかなるものでしたら私どもも精一杯お手伝いさせて頂きますが、こればかりはメールの仕組みから考えましても不可能です」
亜里砂は続けた。
「既に読まれている可能性もございますし、どうかご了承頂き、一刻も早く訂正なさった方がよろしいかと存じます」
ここでようやくお客様も納得され、電話を終えた。
やがて終業時間を迎え、終業ミーティングが始まった。
当日の主な問いあわせ、ペンディング事項、クレーム内容等を報告し合う。
この時亜里砂は、昼前の問いあわせ内容をデータベースに入力したのみで、特別な関心を払わなかった。
亜里砂の判断は間違いではなかったが、結果として美奈子の目に触れる機会が失われてしまった。
その美奈子は、昨晩メールを一通受け取っていた。
「席が隣になってから、君のことが好きになった。夏休みに入って、毎日顔を見ることが出来ない寂しさに、自分でも君の存在の大きさに改めて気がついた。是非付き合って欲しい。貴重な夏休みを楽しく過ごそう。とりあえず、明日、塾の帰りに6時頃通りかかるから、学校の正門前で待つ。夜中まで待って君が来なかったらあきらめるつもりだ。君の都合も聞かず少々強引だと思うけれど、僕の本気をわかって欲しいから。 3年A組 鹿取学久」
終業ミーティングも終わり、私服に着替え、美奈子は帰路を急いだ。
このぶんなら直接向かえば6時少し前に着くはずだ。
その為に今日は、いつもより少し「よそ行き」の服も選んできた。
美奈子は鹿取と隣の席になって以来、特別に意識したことはなかったが、「ちょっといいかも」とくらいには思っていた。
その鹿取からメールを受け取った時には、少しの驚きと、やはり少しの嬉しさがそこにはあった。
よほどおかしな相手で無い限り、好意を寄せてくれる相手には悪い気はしない。
少し早足で歩く美奈子の目に、正門と鹿取の姿が見えてきた。
第15話につづく
第15話 ラブレター3 03/07/30
美奈子は、正門に背中をもたせかけて待つ鹿取のもとへと小走りに走っていった。
鹿取は美奈子に気付くと、
「やあ、昼過ぎからずっと守山に電話してたんだけど、通じなくて。電源、切ってたのか?」
と、持っていた携帯電話をかざして見せた。
「昼は兄貴の会社のバイトしてるし、終わってからここへ来るときは電車が混んでいたから、電源入れるわけにもいかなくて」
「そうか、それで通じなかったのか」
その場にへたり込んでしまいそうになるくらいに力を落とす鹿取。
「なあに、そんなに落ち込んじゃって。急に都合でも悪くなったの?」
いぶかしげに訊ねる美奈子に、
「いや、そういう訳じゃないんだけど、本当はそうなんだ」
「あはは、何それ?」
「ごめんっ!」
唐突に鹿取は右手を手刀の形にして、額にこすりつけるようにして頭を下げながら言った。
「はあ? 何よ突然」
鹿取は説明を始めた。
“守山美奈子”と“森里美香”がアドレス帳で隣接していたこと、そして森里芳恵にラブレターを送ろうとして間違えたことを。
森里美香は鹿取の右側の座席で、美奈子は左側だった事から、「隣の席」の表現がそのまま通じてしまったことと、本文中に宛名を書く事を失念していたことが、美奈子にとって間違いメールと悟らせることを困難にしただろうことも。
「だから、今回のことはみんな俺が悪い!すまん」
「そう、鹿取は美香ちゃんの事が好きだったんだ」
そう言いながら、美奈子はかなり複雑な気分だった。
第一に、ラブレターを貰って、多少は嬉しい気持ちがあったこと。
第二に、美香ちゃんこと森里美香は、美奈子にとって仲の良い友達であること。
第三に、森里美香には、既に彼氏がいるのを知っている事だった。
「ホントはそういう訳なんだ。失敗して守山にも知られてしまったけどな」
「で、美香ちゃんにはちゃんと送り直したの?」
「いや、メールはもうやめにして、明日電話で言おうと思って」
「そう。メールよりは良いんじゃない? メールは一番断りやすい連絡方法だしね。一番良いのは直接会って告白してあげる事だと思うけど」
「解っているんだけど、そう思い悩んでいるうちに夏休みに入っちゃって、会う機会がなくなったのさ」
鹿取は半ばやけ気味に少し早口でそう言った。
そして、何かをふと思いついたように、
「あ・・・あのさ、メールが一番断りやすいんだったら、守山もメールで俺に断ってくれたらよかったのに。ここに来てくれたって事は、もしかして本当に俺と付き合うつもりだったとか?」
間違いを説明することにばかり気を取られていて、この点に今まで気づかなかった鹿取も間抜けだった。
しかし美奈子の方も、気づいてくれないことを残念に思いながらも、実は少し安心していた。
告白してきた相手には悪い気はしないし、いくらかの時間は鹿取について考え、鹿取とデートする自分を思い描いたりもした。
まだ本格的に好きな人という訳ではなかったが、それでも美奈子は自分の気持ちを見透かされたような気がして、思わず照れて赤くなってしまった。
もちろんこういう時の反応は、“照れ隠しにわざと憎まれ口をたたく”と、相場は決まっている。
「そ、そんな訳ないでしょっ、あんな超ダサイメールを送った本人を笑いに来ただけよっ!」
そう言いながらも、美奈子の心臓はバクバク状態だった。
「そうか、超ダサかったか。なら、森里に届かずに正解だったな。もっと推敲した方が良さそうだ」
憎まれ口を受け流され、美奈子は拍子抜けしてしまった。
「まあいいわ。どういう内容で告白するかは私の知ったことじゃないしー」
「そりゃそうだな。ともかく、守山には悪かった。ゴメン」
「何度も謝らなくいいわよ。で、『それじゃ頑張ってね』って、私はここで帰ればいいの?」
わざとらしく美奈子は言った。
「お詫びに今から二人だけで遊びに行かない? デートって訳じゃないけど、全部おごるからさ。その代わり、森里の好みとか教えてよ。どう?」
「いいけど、ホテルに連れ込まないでね」
「連れ込みって、何だその言い回しはー!!」つい興奮気味に言う鹿取。
「ちょっとー、ここは正門前よ。変なコト大声で言わないで!」
「あっ。ゴメン」
二人は精神的にも物理的にもぎこちない距離を取りながら、駅へ向かって歩き出した。
第16話につづく
第16話 ラブレター4 03/08/07
ゴロロロロ・・・ガコーン
美奈子と鹿取は、学校の最寄り駅から電車で30分ほどのボーリング場に来ていた。
6時を過ぎてからだったので、遠くへも行けないし、近場だと学校のみんなとばったり出会いそうだということで、美奈子の提案だった。
美奈子は、ゲーム中にも雑談がてら森里美香の趣味や好物、普段一緒に遊んでいる時のエピソードなどを話した。
鹿取はその話を、時には質問を交えて聞いていた。
この時点では、まだ森里美香に彼氏が既にいることを話してはいないし、鹿取もその点質問はしていない。
「さて、次は俺の番か。8本以上倒せば守山に追いつけるぞ」
「せいぜい頑張りなさいね。ハンディなしでやってるんだから」
「よーし、見とれよー。とりゃっ」
ゴロロロロ・・・ガコーン。5本。
もいっかいゴロロロロ・・・ガコーン。3本。
「よっしゃー、8本。これで同点だな」
右手でガッツポーズを取りながら鹿取は言った。
「私だって次にストライク出せば引き離せるわ」
そう言いながら、美奈子は慎重に投球した。
ゴロロロロ・・・ガコーン。ストライク。
「やったー、やったわ。これで私の方がリードねっ♪」
美奈子はぴょんぴょん飛び跳ねながら両手を叩いて喜んだ。
よほど嬉しかったのか、あまりに元気よく飛び跳ねるたびにスカートがめくれている事には気づいていないようだった。
「パンツ見せてまで飛び跳ねて喜ぶなんて、案外子供っぽいな、守山は」
あまりにも馬鹿正直に言ってしまうのは、打算の無さの裏返しに未熟さの表れだろうか。
美奈子はバッとスカートを抑えながら、
「鹿取に見せてるんじゃないの! 鹿取が見たいのは美香ちゃんのパンツでしょ?」と照れ隠しに早口で言った。
「何だそれは!? っていうか、誰に見せるつもりなんだ? とか、何か色々とツッコミどころ満載だな」
「別に、漫才やらかそうってつもりじゃないんだけどね」
ところが、スカートを気にし始めた美奈子はすっかり調子を落とし、23ポイント差で一ゲーム目は負けてしまった。
「派手に飛び跳ねなきゃパンツ見えないから、普通に投げれば?」
勝利に気をよくした鹿取がジュースを飲みながら言った。
「あーっ、終わってから言う事ないじゃない、ヒキョー者〜。こっちは見えちゃってないかずっと気にしながら投げてたんだから〜」
うらめしそうな目をしながら美奈子が抗議した。
「聞かれりゃ答えたさ」
しれっと言う鹿取に
「そんな〜。パンツ見えてない? なんて聞きにくいわよ。え〜い、こうしてやるっ」
美奈子は鹿取のジュースを取り上げ、一気にゴクゴクッと飲み干してしまった。
「ジュースはスカートの中覗いた見物料ってとこね」
「美奈ちーと鹿取の間接キス、見ーちゃった」
後ろから声を掛けられ、美奈子と鹿取はびっくりした。
もっとも、声と共に美奈子のことを美奈ちーと呼ぶ人間は一人しかいないので、誰かはすぐに判った。
森里美香だった。
第17話につづく
第17話 ラブレター5 03/08/11
「美香ちゃん、どうしてここに?」
思わぬ人物の登場に、つい訪ねてしまう。
「んふふー、私もデートなの。うちの近所のN大生で親同士が仲良くってね、家庭教師代わりに時々勉強見てもらってるの」
美香がそう紹介すると、一歩下がっていた長身でスマートな感じの男が会釈した。
美奈子と鹿取もあわてて会釈を返す。
「あ、あのね、鹿取とはデートじゃなくってね、何と言ったらいいか・・・ほら」
美奈子は鹿取に目配せし、話を引き継いで貰おうとした。
「ああ、ちょっと守山に頼み事があって、その交換条件でボーリングをおごらされたのさ」
“おごらされてるって何よー”と心の中でつぶやきながら、美奈子は鹿取をジロッと睨んだ。
その返答は当たらずとも遠からずだが、美香は信じようとしない。
「だって美奈ちー、鹿取のジュースそのまま取り上げて飲んでたじゃない。二人っきりで遊んでてさ、間接キスまでしておいて“デートじゃありません”って言って、なーんか隠してない?」
「あはは、隠してるとかそんなんじゃないんだけどね、今日だけは特別な事情があって・・・」
美香の追求に美奈子は慌てて答えた。
鹿取も続けてちらっと長身の男性と美香を見やりながら言った。
「実は好きな人に告白しようと思って、もしもそれがかなった時のデートの練習に付き合って貰っているんだ。・・・・・・たぶんもう告白してもダメだろうけどね」
美奈子は内心舌打ちした。こういう話題は、ますます興味を持って聞かれるだけだということを、美奈子自身よく知っていたからだ。
「ふーん。 で、誰? 鹿取の好きなのって」
「え゛っ、それは内緒だ」
案の定の展開に押され気味の鹿取。美奈子は仕方なく助け船を出すことにした。
「私たちだけの話題だけで話してたら美香ちゃんの彼氏にも悪いわ。早く二人っきりになりたいだろうし」
美奈子と鹿取は何とかピンチを切り抜ける事が出来た。
美香も完全には納得していないようだったが、ずっとこの話題というわけにもいかず、結局すぐに別れた。
残された美奈子と鹿取は、これ以上ボーリングを続ける意味も気力もなく、早々に帰路に就くことにした。
帰りの電車の中は空いていて、この車両には美奈子と鹿取の他数人の乗客があるだけだった。
美奈子は沈黙を続ける鹿取に
「ゴメンね、ホント言うと美香ちゃんに彼氏がいるの、知ってたの。彼氏を直接見るのは今日が初めてだけど」
と声を耳元で声を掛けた。
普通に話せば他の乗客にも聞こえてしまいそうで、小声で話せば電車のモーター音や雑音にかき消されてしまいそうだった。
美奈子は言葉を続けようとした瞬間、電車はカーブに差し掛かって大きく揺れた。
元々鹿取の耳元にあった美奈子の唇が、揺れの影響でそのまま鹿取の唇に重なってしまった。
「・・・っ」
間接キスくらいは平気だった美奈子も、直接ともなれば話は別。
おそるおそる鹿取を見ると・・・・・一生懸命唇をごしごし拭いていた!
照れや恥ずかしさを感じるよりも、思ったことがつい言葉に出てしまった。
「事故よ、事故。正真正銘の事故。でもね、すぐに拭き取りたくなるほど私の唇は嫌?」
「あ、ごめん。そんなつもりじゃないよ。びっくりしたから、つい・・・」
「反射的にそうするって事は、頭で考えるより根本的なところで嫌ってるんじゃない?」
「そう絡むなよ。どうせなら予め断ってからしてくれればよかったのに」
「断ってからキスするなら、相手が美香じゃなくてもいいんだ。ふーん」
拗ねたように鹿取に背を向けた美奈子は、ようやく気がついた。
キス以降美奈子自身も気が動転して、声が大きくなっていたことに。
同じ車両の乗客はみなこっちをみてクスクス笑っていた。
鹿取も同様に気づき、二人は真っ赤になってうつむいてしまった。
◇
「それで、鹿取はどーするの?」
電車を降り、途中まで一緒に帰る道すがら美奈子が聞いた。
「うん、やっぱり明日にでも電話して、きちんと気持ちを伝えるつもりさ」
「でも、もう彼氏いるんだよ?」
「ああ。気持ちを伝えないまま振られるより、きちんと伝えてから振られるほうがすっきりするからな」
「そっか、じゃ頑張ってね」
「おう」
「それからね、結果はもう見えてるから、明後日に残念会を開いてあげる。一緒に海にでもデー・・・遊びに行こうよ。私とで良ければだけど」
「嫌じゃないけど、出来たら残念会を開かなくても済むよう祈っててくれ」
「わかったわ。それとね、メールでラブレター送るのは止めた方がいいよ。メールってのはね、善悪はともかくとして技術的にはサーバ管理者や盗聴者がその気になったら、いくらでも簡単に中身見られるんだからね。知ってた?」
「そうなの? 知らんかった」
「だから、残念会は電話で連絡してね。メールじゃ嫌よ」
「はいはい」
「さてと、これで夏休みは少なくとも男っ気なしで終わるのは回避出来そう」
「俺は滑り止めか! っていうか、残念会を開かなくても済むよう祈っててくれって言ったのに全然違うじゃないか」
「男が細かいこと気にしちゃダメよ」
何か騙されているような気がする鹿取だった。
第18話につづく(次回は、たぶん夏コミ終了後になる予定)
CM (03/08/12)
コミックマーケット64では、萌え炉利っくも「裏路地っく
〜2003年夏モデル〜」に収録して頒布致します。
サイトでは公開しにくいちょっとえっちなシーンもアリ。
(とは言っても15禁や18禁の指定はなく、少年誌程度のえっちっぽさですが、ハードなえっちよりその方が「萌え」るでしょ?)
同人版では、亜里砂の着替えシーンのイラストもでーんと収録。
特別にサムネイルだけちょこっとお見せしちゃいますね。
当日は会場で見かけましたら、そしてお気に召して頂けましたら、どうか買ってやって下さい。
※同人版に故意にプレミアをつけたり、売り上げを不当に伸ばそうとする策ではありません。
っていうか、うち程度のサークルではそもそもプレミアなんてつかないし(笑)
不当に売り上げを伸ばさなくても、毎回100〜200程度しか持ち込んでいませんので、だいたい完売していますしね。
売れ残りが出た場合はしょうがないですが、なるべくその数を減らす努力として宣伝をしているだけです。